今回は作曲家・アーティスト、経営者と多彩な活躍をみせるTom-H@ck氏にお話をお伺いする事が出来ました。 Tom-H@ck氏のプロフェッショナルな思考、仕事に対する姿勢など深く濃い内容となっています。

ではご覧ください!

Tom-H@ck とは

Tom-H@ck(トムハック)

サウンドクリエイター・アーティスト・プロデューサー
株式会社TaWaRa・CAT entertainment株式会社 代表取締役

2008年のデビュー作、社会現象にもなった大ヒットTVアニメ『けいおん!』の楽曲を手がけ、その後、自身のアーティスト活動「OxT」「MYTH & ROID」の2つのユニットでアーティストデビュー。

以降、T.M.Revolution、LiSA、でんぱ組.Inc、ももいろクローバーZ、内田真礼などのアーティスト、アイドル、 声優のプロデュースや楽曲提供、映画、アニメ等の劇伴音楽なども担当。最近ではTVアニメ『うちタマ?!〜うちのタマ知りませんか?〜』の劇伴音楽も手掛けている。

2016年5月に音楽制作会社、株式会社TaWaRaを設立。 2020年4月には株式会社 TaWaRa 及び株式会社 F.M.F からアーティストマネジメント部門を独立・合併し、 CAT entertainment 株式会社を設立。

 

音楽との出会い

インタビュアー:
今日はTom-H@ck氏に来ていていただきました。宜しくお願いします。

Tom-H@ck 氏:
宜しくお願いします

インタビュアー:
聞きたいことが沢山ありますので、先ずは作曲に目覚めた、興味を持ったきっかけは何だったのでしょうか?

Tom-H@ck 氏:
きっかけは2つあって、1つ目は僕が8歳くらいの時に、従兄弟がX JAPANにすごいハマってて、ドラムを趣味でやっていたので、それを僕の家に来て「こうやるんだぜ」みたいな感じでエイトビートのやり方とか教えてもらった時です。

2つ目は、いたるインタビューでお話ししているんですけど、僕が中学の時に大失恋をした時です。
中学3年生の時に大好きな子がいて、その人と別れて、「あ、もうこれ人生終わっちゃう」みたいな青春時代があって。 落ち込んでいる時にポルノグラフィティの『サウダージ』って曲がリリースされて、それが別れの曲だったんです。それを聴きながら近くの公園で1時間くらい雨の中ずっと雨に打たれたという壮絶な青春時代があって。
それを聴いた後に立ち直って、「音楽ってこんなに人を動かす力があるんだな」ということで、もしかして自分が音楽をやって人を救う事が出来るのであれば、それは幸せなことだなと思って。 『モテたい』から始めるとかじゃなくて、人を救うために音楽をやりたいというところが1番最初のきっかけだったんですね。その2つが今思うと1番大きなきっかけかなという感じですね。

インタビュアー:
お父様が音楽をされていたということですが。

Tom-H@ck 氏:
父と祖父が趣味程度で。 父がオーディオマニアで、2階の父の部屋が全部オーディオで、その頃から音楽を聴く環境が沢山あり、ギターもやっていたので。祖父に関しては尺八をやっていて。

インタビュアー:
尺八ですか?

Tom-H@ck 氏:
そうなんですよ、尺八ですね。なので、それも小さい頃から尺八を音源に対して弾いているような音がずっと生活で流れていて、音楽が身近にあったという意味では、父と、祖父母。

インタビュアー:
ご出身は宮城県?

Tom-H@ck 氏:
宮城県です。石巻市という所です。

インタビュアー:
自然の環境が多い所で影響を受けた音はありますか?

Tom-H@ck 氏:
これはあります。僕の趣味として電車の中とか、会話している人を見る「人間観察」が凄く好きなんですけど、その人が育った環境で、何か大きな建物がない所で育った人って結構芸術家の感性が育ちやすい。
絵を描くとか、音楽もそうだし、そうじゃないものでエンタメ系とか、田舎出身の人が多くて。 景色、海だったり、開けている緑だったりとか、そういうものが人間に凄い影響を与えるんだなってことを、ここ最近になって特によく思うので、僕が石巻に育ったというのが今に活かされている感じがしますね。

インタビュアー:
例えば曲の中に海の波音を入れたり、先程おっしゃった、おじい様の尺八の音を入れるとかはありますか?

Tom-H@ck 氏:
ありました。僕が21歳の頃に、日本発で海外に向けて音楽を作る『Far East Peach(※1)』というプロジェクトに参加していたんです。正に日本の楽器を使うというものだったので、尺八など沢山使いました。

(※1) Amazon販売ページ:https://www.amazon.com/Naughtic/dp/B0016DP302

歴史上の快挙、人生を変えた曲

インタビュアー:
アニメのタイアップでは、作品があるものに対して曲を作る、あるいはイメージだけで曲を作るなどがあると思いますが、どのように楽曲制作を行うのでしょうか。また、思い入れの強い作品はありますか?

Tom-H@ck 氏:
これも大きく分けて2つあって、1つ目が、やはり僕が有名になるきっかけとなった『けいおん!』というアニメで、その中で第二期目のオープニングの『GO! GO! MANIAC』という曲があって、そちらが史上初オリコンで1位2位を独占するという歴史上の快挙があったんですけど、それが今思うと僕の人生を変えた曲でもありますし、未だに 「あの曲作った人だよね」ということで、色々道が切り開けたりとかするので、そう意味では『GO! GO! MANIAC』が1つ目。

2つ目に関しては、最近ですが『Re:ゼロから始める異世界生活』というアニメがありまして、そのアニメの楽曲も僕が作っているんですが、特に去年とかは、1か月に4~5 ケ国くらい海外でライブをしていて、海外に行くきっかけになった1番大きい作品。 さきほどの音楽を始めたきっかけと同じでターニングポイントとして、『Re:ゼロ』の楽曲、特に『STYX HELIX(スティックス ヘリックス)(※2)』が人生を変えた曲なのかなと。
その2曲、その作品2つかなと思います。

(※2)『STYX HELIX』
『Re:ゼロから始める異世界生活』の前期エンディングテーマ。 YouTubeでの再生回数は670万回。

プロフェッショナルな仕事

インタビュアー:
楽曲制作を行う時、原作を読んでから作るのか、なんとなくイメージで作るのかはどうでしょうか?

Tom-H@ck 氏:
これはですね、必ず読みます。その原作が大袈裟に言うと50巻くらいが出ていても、50巻全部読みます。

インタビュアー:
凄い!

Tom-H@ck 氏:
なので、『オーバーロード』とかはすごく厚い小説だったんですが(平均400ページ)、その時に7巻くらい出版されていて、ものすごい量でしたけど全部読みましたね。読まないとプロフェッショナルな仕事は出来ないので必ず自分の中に入れてからやります。

音楽に対する考え

インタビュアー:
楽曲制作にあたり、Tom-H@ckさんの中で特に大切にしていることはありますか?

Tom-H@ck 氏:
これも2つあって、1つ目がタイアップする時の話なんですが、タイアップする時って、何かの原作がある、ないしはオリジナルで作品を作って、アニメコンテンツが先に走っている、それに付随して音楽を飾りつけとして行うんですが、その時に必ず意識していることがあって、原作があるのであれば、原作を先に読むじゃないですか。読んだ時って、キャラクターデザインも無ければどういう演出になるのか、どういう間でキャラクターが喋るのか分からない。
なので、ある程度自分の頭の中でこういう演出になるんだろうなって思いながら読むわけですよね。
読んだ時に、「この話だったらここに何か足りない演出の隙間がある」みたいなところを自分で見つける。見つけてその隙間を凹凸のように埋めて無くしてあげるような音楽を作ることがタイアップの時に意識していることですね。足りない『匂い』とか『味』みたいなものを音楽で担うと。

あともう1つは、これは音楽を作るときに全て考えることだし、もしかすると音楽だけじゃなくて経営とかもそうだと思うんですが、僕の信念だけですが、「なにかをやる時には絶対に1番を取らなくてはいけない。」
2番とか3番を目指すのではなく、「リリースされたら絶対1位を取る」とか「話題を呼ぶ」とか、「誰も真似できないものを世に生み出す」とか、絶対にTOPを狙うという意識を日々持っていないと、この世界で生き残れないと思うので、大事にしている意識ですね。
曲を作る時も常に思っていて、それが2つ目として大事なことかなと思います。

インタビュアー:
ちなみに曲作りする時に「曲が出来ない」と煮詰まることってありますか?

Tom-H@ck 氏:
あまりないですね。僕の場合は生活していて、急に音楽が降り注いでくるタイプじゃなくて、実際に作業場に行って 「やるぞ」と言って制作に入るタイプなので。 そういう意味では作業的な流れが自分にできていて、座った瞬間にモードに入る。あんまり悩まないです。悩むことはほぼ無いですね。

インタビュアー:
先日 Tom-H@ck さんの YouTube チャンネルに私も出させていただいてね。

Tom-H@ck 氏:
ありがとうございました。

インタビュアー:
その時には悩み事がほぼ無いって言っていましたね。

Tom-H@ck 氏:
無いですね。逸人さん(インタビュアー)もそうかもしれないですけど、やっぱり人の上に立つ人って、その人が悩んでいて下から見ると嫌じゃないですか。

インタビュアー:
そうですね。

Tom-H@ck 氏:
「こんな弱い人なんだ」とか見えたら嫌だし。 元々強いのもありますが、色んな意味で耐性が強い方だと思いますね。

インタビュアー:
特にストレスとかも感じない?

Tom-H@ck 氏:
ほぼ無いですね。

 

仕事に対する考え方、人間力について

インタビュアー:
GAME MUSIC メディアを見てくださっている方というのが、音楽だったり、アーティストだったり、声優だったり、音楽の作り手を目指したいという方に見ていただいているのですが、作曲家に向けてTom-H@ckさんから何かアドバイスはありませんか。

Tom-H@ck 氏:
いつも言っていることがあって、先ず何かのプロフェッショナルになる!とか、会社経営とかもそうだと思うんですけど、何か事業を成功させる時って生半可なものじゃダメじゃないですか。 意外と、音楽家とかアーティストになりたい人って、ある程度の憧れから言い出すので、実際に努力するとか何か情報を集めたりだとか、何か自分が前に進むためにやることを意外と置き去りに、おざなりにしながら夢は語るとか現実問題結構あるんですよ。
なので、本当にそういう何かしらのプロになる時には、誰にも負けないような数の努力とか、人を見たりとか研究したりとかそういうことをしてから夢を語らないとダメだよって。
もちろん自分がなりたいってことを口に出すことは大事。その後にちゃんとそれに伴ったことを実践としてやることが、夢を目指すんだったら大事なんじゃないかなと。それがひとつですね。

今って昔と変わってきているのが、特にここ10年くらいで相当変わったんですけど、作曲家ってその人自身に作曲能力があるだけじゃ売れっ子にならないんですよ。いくら才能があっても、才能ある人って五万と居るので。
例えば現場に行った時に、すごいみんなから可愛がられるとか、あと発言が面白いとか、魅力があるなとか『求心力』が人自体にないとそもそも売れっ子にならないというのはあります。
先ほど言った能力を高めるとはまた別の能力を高めることが大事で、なのでそこで1番大事なのは、プロフェッショナルな現場に行ったら、『余計なことは言わない』。これはとても大事です。 余計なことは言わないけども前向きになるようなことを自分の言霊で進めさせる。そういう能力とかを身に付けていくとどんどん売れっ子になっていくと思うんですよ。そこをみんな気づいていないから、ヒットを1曲だけ出したけどその後続かないとか、長い間業界に居られないとかそういう風になっていく。なので先を見据えて今の段階から『人間力を磨くことは、才能を磨くことと同じ位大事』ってことがアドバイスですね。

アーティスト業と社長業の違い

インタビュアー:
現在 Tom-H@ckさんは『MYTH & ROID』(※3)、『OxT』(※4)、アーティスト活動をされながら、社長を務めていらっしゃいますが、アーティスト業と社長業の考え方の使い分けやポリシーはありますか?

※3 『MYTH & ROID』(ミスアンドロイド)
ユニット名は、過去を連想させる「MYTH」(神話)と未来を連想させる「Android」を組み合わせた造語。
メジャーデビュー曲であるTV アニメ『オーバーロード』のED曲『L.L.L.』はiTunes総合ランキングでは最高3位を記録

※4 『OxT』(オクト)
オーイシマサヨシとTom-H@ckによるデジタルロックユニット。2013年『ダイヤのA』の主題歌を担当

Tom-H@ck 氏:
ありますね。
今こういう風にインタビューを受ける時もそうですけど、自分がどういう風に見えるかとか、ぶっ飛んでる風に見えた方がいいのか、面白く見えた方がいいのかとか考えながらやっているんですけど、社長の時はあまりそれを考えてなくて。
「周りの人がどうやったら幸せになるか」とか、「うまく働いてくれるか」とか、そういうことばっかり。自分がどう見えるかは別として、それに対して身を委ねるというか、切り分けてやっているので。
表に立つ時には自分が先頭に立ってみんなを引き連れなくちゃいけないけど、社長の時って違う意味で引き連れなくちゃいけない。自分が目立つとかじゃなくて、みんなのことをもっと考えながらやらなくちゃいけない。そこら辺が1番の違いかなと思います。
でも何か特殊で、自分も表に出ながら、社長やマネジメントもする所謂『プレイングマネージャー』みたいな人種って少しずつ増えてるんですよね。多分、新人類な方なんです。

インタビュアー:
新人類?

Tom-H@ck 氏:
芸能界でも表に出た人たちが経営とかに携わるって結構現代的な形ですよね。表に出た時の経験値をちゃんと栄養として消化して、それをまた違う形で経営に還元していく。それが良いところ悪いところ含めてあると思うんです。そういうことが出てきたのがここ5~7年とかで歴史が浅いので、今後そういう人たちが本当にうまくいくのか、いかないのかを含めて、色々な人からの意見とかも集まってくると思います。
今日質問をいただいて思ったのが、全部が繋がっている感じがしますね。セパレートされているのではなくて、いろんな経験が全部混ざり合って進んでいくって。

インタビュアー:
マネージメント会社を持っていらっしゃるじゃないですか?社長がアーティストでもあり社長でもあるという。 だからアーティストの気持ちも理解してくれるというのが、所属しているアーティストからすると安心しますよね。

Tom-H@ck 氏:
それもよく言われますね。 でもそれに関しては僕の持論があって、表に立っていなくてもアーティストの事をもっと分かる人は居ます。それはやっぱり『人』なのかなって思いますね。

インタビュアー:
それは先ほどの『人間力』を磨けということですか?

Tom-H@ck 氏:
僕は何も磨かれていないですけど、本当にそういうことやる人たちは磨かれていて、多分自分が表に立っていなくてもアーティストの気持ちとか、マネージメントが凄く上手な人って天性の才能があると思うんで、それを持っているのかなと思いますね。 だから表に立っているから絶対分かるって無いのかもしれないですね。

インタビュアー:
私は昔から親しくさせていただいているので、アレなんですけど (笑)

Tom-H@ck 氏:
そうですよね(笑)

インタビュアー:
人間性が出ていますよね。優しいというか。成功されて色んな人に夢を届ける職業を今も続けているって本当に凄い事だと思うので、これからの活躍も期待しています。

Tom-H@ck 氏:
ありがとうございます(笑)

インタビュアー:
最後の質問なんですが、今後予定しているイベントなどがあれば。

Tom-H@ck 氏:
アーティスト活動や、プロデュース・作曲のリリースなど沢山あるので、基本的にはTwitterを見ていただければ。
「Twitterを見ていただければ」と言いながら、見ても分かんないことが沢山あるので、アーティストのHPとかも全部追いかけてもらえればという言い方になって申し訳ないですが(笑)
でもTwitterが1番リアルタイムで分かりやすいかなと思います。

インタビュアー:
ありがとうございます。

Tom-H@ck 氏:
ありがとうございました。

各種SNS/公式サイト

Twitter https://twitter.com/TomOshima_TH
Instagram https://instagram.com/tom_oshima
TikTok https://www.tiktok.com/@tom_oshima
OxT 公式サイト http://www.oxt-music.com/
MYTH & ROID 公式サイト http://mythandroid.com/
CAT entertainment HP http://www.cat-ent.jp/
TaWaRa HP http://www.ta-wa-ra.com/

 

今回のインタビュー動画も特別公開

今回のインタビュー風景を特別に未来メディア公式チャンネルにて公開しております。 是非動画でもご覧ください。

今回は大変忙しい中 Tom-H@ck さんがインタビュアーを受けてくださいました。
インタビュアーとは旧知の仲で、とても和やかな雰囲気でインタビューが進み、記事には出来ないようなお話も・・・

常に進化し続けるTom-H@ck氏の今後も更に注目です。
最新情報が気になる方は是非SNSをチェックしてみてください。